寄生虫名 | Perkinsus olseni(パーキンサス・オルセナイ) |
---|---|
分類学 | 原虫類(アルベオラータ、パーキンサス科) |
宿主名 | アサリ(Ruditapes philippinarum)、ヨーロッパアサリ(Ruditapes decussata)、アカアワビ(Haliotis ruber)、マルアワビ(Haliotis cyclobates)ミツウネアワビ(Haliotis scalaris)、ウスヒラアワビ(Haliotis laevigata) |
病名 | パーキンサス症 |
寄生部位 | 鰓、外套膜等の結合組織 |
肉眼所見 | 重篤感染した貝では外套膜や鰓の表面に結節が現れるが、通常は確認しがたい。 |
寄生虫学 | 渦鞭毛虫類に近縁の原生動物と考えられているが、系統的な位置ははっきりしていない。生活環は、宿主体内で分裂増殖する栄養体期と宿主体外での胞子形成期からなる。栄養体は細胞質内に空胞をもつシグネットリング状の虫体として観察される(写真1)。宿主が死んで嫌気的状態になると遊走子嚢が形成され、遊走子が水中に放出される(良永、2004)。 |
病理学 | 栄養体の周囲に宿主細胞の浸潤がみられ、炎症反応の結果として白色の結節が形成される。この寄生虫によるアサリの大量死は報告されていないが、アサリの成長や濾水能力に影響があるかもしれない(Choi et al., 2002)。 |
人体に対する影響 | 人間には寄生しないので、食品衛生上の問題はない。 |
診断法 | RFTM培地(Ray’s fluid thioglycollate medium)で培養後、ルゴール液で染色することにより大型化した栄養体(前遊走子嚢)を検出する(写真2)他、病理組織やPCRによる診断法も検討されている(Hamaguchi et al., 1998; Maeno et al., 1999)。 |
その他の情報 | ITS領域および5.8S rRNA領域の塩基配列がヨーロッパのヨーロッパアサリやオーストラリアのアワビ類に寄生するPerkinsus olseni/atlanticusと一致することから、これらと同一種であるとされている(Hamaguchi et al., 1998)。最近、日本のアサリから記載されたP. honshuensisとは、栄養体のサイズやITS領域の塩基配列の違いなどで識別できる(Dungan and Reece, 2006)。 |
参考文献 |
Choi, K. S., K. I. Park, K. W. Lee and K. Matsuoka (2002): Infection intensity,
prevalence, and histopathology of Perkinsus sp. in
the Manila clam, Ruditapes philippinarum,
in Isahaya Bay, Japan. J. Shellfish Res.,
21, 119-125. Dungan, C. F. and K. S. Reece (2006): In vitro propagation of two Perkinsus spp. parasites from Japanese Manila clams Venerupis philippinum and description of Perkinsus honshuensis n. sp. J. Eukaryot. Microbiol., 53, 316-326. Hamaguchi, M, N. Suzuki, H. Usuki and H. Ishioka (1998): Perkinsus protozoan infection in short-necked clam Tapes (Ruditapes) philippinarum in Japan. Fish Pathol., 33, 473-480. Maeno, Y. T. Yoshinaga and K. Nakajima (1999): Occurrence of Perkinsus species (Protozoa, Apicomplexa) from manila clam Tapes philippinarum in Japan. Fish Pathol., 34, 127-131. 良永知義(2004):貝類の原虫病、「魚介類の感染症・寄生虫病(若林久嗣・室賀清邦編)」、恒星社厚生閣、東京、pp. 320-337. |
または
(写真提供者:良永知義)
写真2.RFTM培地で培養後、ルゴール染色することで検出された前遊走子嚢
写真1.アサリの鰓に寄生しているPerkinsusの
栄養体(矢印)